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手をかざす

閑散とした地下鉄の通路にポツンと最新型のコインロッカーがある。
その少し近くで僕は人を待っていた。
すると、おじさんがコインロッカーの前で立ち止まった。
どうやら預けておいた荷物を取り出そうとしている。
最新型のコインロッカーは中央にタッチパネル的なものがあり、
それを操作すると精算が出来るようになっている。
通路は僕が人を待つ以外誰もいない、やっぱり閑散としている。
地下通路だから閑散と言う言葉がよく似合う。

おじさんはタッチパネルに気が付いた。
僕は遠目ですから、よくわからないが、
まずファーストコンタクトを試みたようだ。
「ピッ!」と音がする
遠目だからわからないけど、
そこに文字が書いてあるのか?
おじさんは首を傾げる。
たぶん、ファーストコンタクトは失敗だったようだ。


気を取り直して、おじさん、セカンドコンタクトの瞬間、
「預けたロッカーの番号を選んでください」
とコインロッカーが女性の声でしゃべり出した。


おじさんは驚きのあまりタッチパネルから指が離れた。
今のコインロッカーが言ったことを理解しただろうか?
あの驚きようはパニクってるんじゃないだろうか?
僕もしゃべるコインロッカーは初めてみた。
閑散とした地下通路だからコインロッカーの声は
残音がいつまでも残ってるように思えるんです。


その立ち位置から一歩引いたおじさん、
どうするかと思えば、幾つもあるロッカーの中の1つの扉の前に移動した。


さあ、おじさん、どうする?
どうやら、おじさんはコインロッカーが何て言ったのか、わかっていないようだ。
僕の推測ではタッチパネルに幾つかのロッカーの扉の番号が表示されて
それを選べとロッカーは言ってくれたと思うんだ。
もしくは、扉の番号を入力したら精算金額が出て、
お金を入れたらロッカーが開く仕組みだと思うんだ。
でも、なぜ、おじさん、タッチパネルから離れて自分が預けただろうロッカー前に立つ?
「選んでくれ」って言うのはロッカーそのものではないんじゃないか?
たぶん、タッチパネルの中に秘密があるんじゃないか?
さあ、そこからどうするんだ?おじさん?


僕は小さな頃から「困ってる人がいたら手を貸しなさい」と
口酸っぱく育ったので偽善じゃなく心からどんな時でも手を貸したいと思ってます。
でも、おじさん?今は困ってないよね?そうだよね?


するとおじさんのサードコンタクトは、
自分の荷物が入ってるであろうロッカーの扉に
ゆっくりと右手をかざした!


僕は内心、「マジでっ?」と心の中で叫んだが、
おじさんに僕の心の声は届いていない。
その行動は「ロッカーを選んだ」と言うことなのか?
でも、間違いではないのですが・・・。
扉に手をかざすだけで精算が出来るのか?
僕が知らないうちに、もうそこまで未来に辿り着いていたのか?
それとも最先端のテクノロジーを何かのゴシップ誌で読んだのか?
ここは東京のど真ん中だし、「もしかしたら」と思ったのか?
もしくは「いちかばちか」と思ったのか?


当然、手をかざしたが何も起こらない。


でも、さらに驚きのフォースコンタクト!
左手もゆっくり伸びてゆく。
ヤメろ〜ッ!おじさん、もうヤメてくれ!
そっちじゃない、タッチパネルだ!
っと僕の心の叫びも虚しく、
おじさんは左手も扉にかざし、
両手でロッカーの扉を
優しく暖めてるような格好になってしまった!




それを目の当たりにし、腹の底から沸き上がる何かを感じたので、
僕はロッカーを暖めた格好になっているおじさんに背を向け
沸き上がってくる何かを押し殺しこらえた。

めでたしめでたし。





僕は物凄くツボだったんだけど、
ツレに上手く説明できなくてさ。
むきになってブログに書いてみたよ。



日本橋の三越をのぞいてみた。凄いね天女像。
手をかざす_f0037239_2319465.jpg

これ10年かけて制作されたらしい。
by hisa_coff | 2009-04-20 23:27 | デイリー