人気ブログランキング | 話題のタグを見る
微熱少年
ほらね。嘘じゃないでしょ。

マンボウと言うトンネルがあってこれをくぐらないと学校に行けないんだよ。
トンネルの上は線路が6本通っていて暗闇の距離はあるのに狭くて電灯もないから、子供には怖すぎる。
集団登校だから安心だけど、学校で遊び過ぎて一人で帰ろうもんなら、パンツはびしょ濡れです。
怖いのは僕の家側からのトンネルの形は丸い半円なんだけど、学校側から見たら四角いんです。そして、湿っててちょうど入って中央付近に差し掛かると水滴が落ちてくる。
僕らの間では水滴をくらうと死ぬって言われてて、毎日、数人は水滴をくらってと登校してた。
意地悪な大人も居るもんで神隠しに遭うって言う人もいた。

だから友達も線路を境に分かれてしまう。線路向こうの友達とは学校で会うか、少年野球のグラウンドで会うか、のどちらかなんだけど、線路向こうに面白い奴がいて、遊びに行っていた。
遊ぶときはなるべく自転車で遠回りして別のトンネル。と言うかガード下をくぐって遊びに行ったが、その日は学校帰りに寄ってしまった。

彼との遊びは山で遊ぶ、そして「禁じられた遊び」のように、残酷だった。
トノサマガエルのお腹を噛んで切れ目を入れて、皮を一枚はぐのだ。すると桃色の綺麗なカエルが現れる。そのカエルを河へ返すと痛々しく泳ぎだす。その姿にトノサマを感じることもない。マムシを捕まえて爆竹を口に押し込む。するとウナギをさばいたように縦に綺麗に裂けてくれる。「禁じられた遊び」ではお墓を作ったが、そんな感情すら僕らにはない。
ショクヨウガエル(馬鹿でかいカエルを僕らはこう読んでた)を団地の五階の踊り場に置く。飛ぶまで刺激する。僕らは手を汚さない、カエルの周りを棒切れで叩く。するとカエルは大空へと羽ばたく。

そんな残酷な遊びの後、自転車もなく歩いて帰っていたら、マンボウのことを思い出した。それと同時にさっきの残酷さに気付いて罪悪感が押し寄せる。
田んぼのあぜ道と平行に僕の影も伸びて、トンネルから離れようとしてる。

僕は大きな棒切れを探し、それで音を立てながらトンネルに近づいて行った。
まず一歩、暗闇に入るなり叫んだ!「ちょっと〜!誰か!」もう、なんだかわかんない。棒切れで壁を叩き、音を出すことで怖さから逃げたが、逃げれる物じゃない。
中央付近の水滴も体を寄せて逃れたが、体を寄せた時、壁を触ってしまった。
もの凄く濡れててヌルっとコラーゲンくらい、ゼリー感。
無事、四角い入り口から入り、丸い出口から出た!

ホッと見慣れた街を見たら、
誰もいないんです。
音がしないのです。
車の音も、この上の電車も通らない。
動く物すらないので、僕は頭を抱えた。
「そうだ、神隠しだ!」
もう一つ難関があったことを忘れてた。
慌てた僕は、家に向けてダッシュした。
が、
僕は、ふと思ったんだ、マンボウをもう一度抜けると
もしかして、元の世界へ戻れるかも!

慌てて引き返し、丸い入り口から四角い出口に出て、
迷わず、遠回りして別の道を走った。
しばらくすると、すれ違う人も居て少し安心した。
でも、家に帰るまでここが現在だとは信じれなくて、足を止めることはなかった。

家に辿り着き、確認する、母の顔や兄貴の顔、家族が居ることを確認した。
体の震えを抑えつつ、僕は「神隠しから、生還した!」と自分をたたえた!
微熱少年_f0037239_18453999.jpg

ミクシイのコミュニティで頼んだら撮ってくださった方がいらしたので載せます。
今は電気も付いてるね。






プレゼント。。。カテゴリのThanks Clingonを見て。http://hisacoff.exblog.jp/i8
by hisa_coff | 2006-01-20 19:34 | デイリー